第5回「赤城と人々の関わり」【赤城自然塾事務局長 小林善紀】

2010年5月6日 5:00 PM

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【成功させよう「群馬デスティネーションキャンペーン」第5回】
 県央地域の観光資源を振り返って見ると、赤城山の存在があります。
 この地では古代より人々の営みが行われており、赤城山の大ムカデと男体山の大蛇との戦い、美しい赤城姫と渕名姫のお話等の伝説が語られてきました。また、戦国時代には上杉謙信らが往来し、戦いの守り神として信仰したという滝澤不動尊などの史跡があります。
 近年では、志賀直哉や芥川龍之介をはじめきら星のように輝く文人たちが、不便な交通事情を押して赤城を訪れた大きな理由の一つとして、猪谷(大熊)千代さんという一人の才女・モダンガールの存在があります。日本人初の冬季五輪メダリスト猪谷千春氏の叔母に当たる方で、彼女の写真等は赤城山総合観光案内所の展示で見ることができますが、ニッカポッカをはきステキな帽子をかぶったスキースタイルは現代でも通ずる魅力を感じます。
 このように赤城山には、歴史散歩、文学散歩の対象になる豊富な資源があることに気付かされます。
 現在に目を向けますと、私たち赤城自然塾では、環境教育に資する資源調査を3年間にわたり実施し、その結果をデータベース(赤城自然塾)として公開しました。このデータベースはエコツアーはもちろん、一般の観光資源リストとしても十分なり得るものになっております。既にNPO法人シブヤ大学一行が、3年続けて地元市民と一緒に松枯れ林地の森づくりを行っている実績もあります。
 これらの活動を通して分かったことは、良い語り部「人」のいる施設・フィールドにはリピーターが集まる事と、「自然の恵みは人を呼ぶ」ということ、施設・フィールドと人(訪問者を含め)とのハーモニーが大切であるということです。
 例えば、渋川市赤城町の「赤城自然園」には片場さん。26年間我が子のように思いを込めて、自然園を育んできました。前橋市富士見町には、うどん・そばの店「ささや」のおかみの浅見さん。自作の絵手紙と水彩画を展示した「木洩れ日館」を持ち、本の出版もしておられます。
 前橋市三夜沢町の「とんとん広場」には林きみ代さん。地産地消に徹した豚料理やウインナー教室、自営農園による食農体験などができ、時には林さんのお話も聞くことができます。「ぐんま昆虫の森」では矢島園長さん。毎日曜日に昆虫おもしろ講座を続けていて、5月2日で200回となりました。
 観光資源の掘り起こしには工夫が必要ですが、私は、このように「人」にこだわると新しい発見があり、人が呼べ、継続的なつながりが生まれ、観「交」のハーモニーにつながると考えています。

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